入院する部屋の階は…広い病棟だった。
男も女も関係なく
のそ…のそ…と歩いていたり
じっと立って、こっちを見ている。
しばらくすると、
みんなが私に興味を持ったのか集まってきた。
名前は?いくつ?おかあさん?
いろんな質問が飛んでくる。
ごめん…と心が痛んだが、私は話す気になれなかった。
言われるまま誘導されるまま
ナースステーションに入る。
そこで、持ち物検査。
持って行った本を一枚、一枚めくって確認。
鏡も割れたら凶器になるからダメ。
紐や櫛もダメ。
そして、まさかの携帯まで・・・。
これで外部との連絡が途絶えた。
まだこの時は仕事を完全に抜けていなくて
忙しい最中だった。
次の日は、任せてきた子が京都に出張の日。
今の私には・・・何もできない・・・
持ち物検査は、隅から隅までチェックされた。

おやつが15時に出ますが、食べますか?
と、現実味のない質問が飛んでくる。
私は、そんなの食べないからいらない。
食事も食べたくないくらい。
と答えた。
私はこれから待ち受けている
現実が受け入れられなかった。
ナースステーションでの
入院前オリエンテーションを終えて
病室へ案内された。
部屋は、ほとんど仕切りなしでオープン。
隣の病室にも すぅーっと入れる。
ドアがないのだ。
フロアの所々にベットが置いてある感じ…
幸いにも私は窓際だったので、気持ちが楽になった。
同じスペースには、おばあちゃんが1人。
おばあちゃんと2人部屋な感じの雰囲気。
自由に誰でも出入りできる導線があるのだけど…
個室にならないように作られていて
窓も開かない、 ドアもない。
これが閉鎖病棟か。
そうか…ここで私は暮らすのか…そうか…

入れ替わり立ち替わり、誰かが私の顔を覗き込んでくる。
ここに居る人達は、私も含め心が病んでいるのだ。
ここの人達とこれから集団生活をしていく。
ちょっと理解までに 時間がかかりそう。
同じ部屋のおばあさんは、懐かしい昭和の歌をずーとベットに座って歌っている。
遠いところを見て。
なのに私に話しかけたり目を合わせたりはしてこない。
ただ、そこに居て歌を歌ってる。
異常なほどの洗濯物を持っている。
入院・・・長いのかな。と、思った。
今日から宜しくお願いします。
私は、おばあちゃんに心の中で挨拶をした。